11.7 現代文の勉強法
更新日 2021年6月13日
「現代文は伸びない」と言う人もいますが、そんなことはないです。
私は高3春にセンター国語を解いたら80点(200点満点中)でしたが、対策をした後は常に160点を上回るようになりました。
東大模試でも偏差値65まで伸びました。
現代文は高校1、2年でも過去問にチャレンジ可能なので、早期に得意にしてしまうとその後の受験生活が楽になります。
現代文であまりおススメできないのは『感覚』で解くことです。
なんとなく問題文を読んで、なんとなく答えを書いて、なんとなく答え合わせする、これは危険です。
こういう解き方をしていると、筆者の考えにハマったときには高得点になるが、ハマらないときは全部間違える、というようなことが起こり、点数が安定しなくなります。
現代文は、いわば筆者とのコミュニケーションです。
例えるならば、気の合う友達とは会話が噛み合うが、気の合わない友達と話すと全く噛み合わない、というようなものです。
自分と意見や感覚の違う相手とでもちゃんとコミュニケーションするには、まずは相手が言いたいことをちゃんと理解することが必要になります。
これをせずに、相手の意見を自分なりの観点で捉えてしまったり、相手の意見を理解する前に自分の意見をぶつけたら、コミュニケーションは成り立ちません。
まずは正しく受け取ることです。
なお、アンケートでも、東大合格者の80%が現代文は感覚ではなく論理が大事と答えています。
現代文を感覚で解いてしまうのは、思想が根本的に違う『読書感想文』と『受験の現代文』をごちゃまぜに考えているからです。
学校で宿題として出る『読書感想文』では、自分の経験を重ね合わせたり、登場人物の気持ちを想像したりして、自分なりの切り口で思ったことを書くと評価されますよね?
これはこれで大事ですが『受験の現代文』の思想は全く異なります。
『受験の現代文』で重要なことは、本文中から読み取れることだけをただ愚直に読み取ることです。
読解には「自分なりの考え/意見」を入れてはいけません。
ですが頭の良い人ほど、かえって自分なりの考えをもってしまうので、選択肢に違和感をもってしまう傾向があります。
現代文の問題はあなたの意見をきいているわけではありません。多くの場合、作者が何を言いたいかを聞いています。
ですから文中に書いてあることのみを根拠にして、言えることだけを解答する、が正しいスタンスです。
高校3年間の読書量と共通テスト(センター試験)国語をまとめてみました。
人数は少ないものの100冊以上の読書をした人は、国語の点が高いことが分かります。
ですが、0冊だった人と50~100冊読んだ人でほとんど点数に差はありません。
現代文の対策としてオススメされることの多い『読書』ですが、100冊以上読めば意味はあるものの、受験まで時間がなかったとしたら短期的な効果を期待して勉強時間に読書をするのはオススメしません。
先に申し上げた通り、読書をすると「自分なりの受け取り方」をしてしまうので、客観的な読解の力を身に付けるには時間がかかります。
短期的な効果を期待して読書をするぐらいだったら、共通テストの現代文の問題を真剣に読解する方が『得点』は上がります。
(なお、小さい頃の読書はかなり大事そう、また社会人になったときは読書が大事であることは、間違いありません)
<現代文 選択式問題>
選択式問題は、『言い換え』がポイントです。
答えとなる正しい選択肢は必ず本文にあることの『言い換え』で作られています。
選択肢を一つずつ読み、言葉ごとに文中にあるものの『言い換え』か、文中にないものかをメモしていくと、答えが見えてきます。
答え合わせするときには、ただ解答が合っていたかどうかではなく、「なぜその選択肢が正しくて、他の選択肢が間違いなのか」を言語化し、ギリギリ許される『言い換え』をつかむようにすると力がつきます。
慣れてきたら、選択肢を見る前に、自分なりの答えを作ってから選択肢を選ぶと力がつきます。
<現代文 記述式問題>
記述式の問題については、問題のタイプによりますが、解答を作る前に含めるべきポイントを明確にするといいです。
ポイントというのは例えば以下です。
・主語や指示語
「主語がXXであること」
「この指示語がXXを指していること」
・文章の構造
「〇〇と△△が対比されていること」
「◇◇が□□の比喩になっていること」
「▽▽が☆☆の例になっていること」
採点者に対して「こうしたポイントをちゃんと抑えているよ」という解答を作るイメージです。
現代文が本当に得意な人は、正しい解答を作れるだけでなく、採点基準を作れます。
記述式の答え合わせをするときには「模範解答と答えが一致しているか」ではなく、「含めるべきポイントが一致したか」を検討するようにするといいです。
「模範解答と答え一致しているか」という意識で現代文を見ると、「現代文は答えがたくさんある教科」というように見えてしまいます。
ですが「含めるべきポイント」という意識でみると、「現代は論理の教科で、対策次第で成長できる教科」に見えてくるはずです。
論説文については『虫の目』と『鳥の目』を意識します。
『虫の目』とは、1~2文を正確に理解することです。
まず接続詞などをヒントに文章の構造(因果、言い変え、対比、例など)を整理します。
さらに傍線部近くの指示語(これ、あれ、それ)を元の意味に戻します。
この二つを徹底的にやるだけで、格段に読みやすくなります。
『鳥の目』とは文章全体の主張を理解することで、パラグラフリーティングとも言われます。
精読するときには、どうしても細かい一語や一文を読みほぐしたくなりますが、それとは別に「段落や全体として言いたいことはなんだろう?」というのをつかめると、現代文の力が飛躍的に上がると思います。
まず段落ごとに「要はXXXXだ」と要約してください(簡単ではありませんが)
全段落を要約したら、要約した内容を通して読みます。
これで筆者の主張が構造的に理解できます。
もし全段落の要約を通して読んでも意味が通らないときは、どこかの段落の要約を間違えていますので、やり直します。
小説で大事なのは、『登場人物の感情の変化』です。
小説とは、心の変化を文章にしたものだからです。
小説読解の目標は、シーンごとに『登場人物』と『その感情の変化』を整理することです。
小説の文章を読んでいると、必ず『感情の変化を示す描写』が出てくるはずで、それを正しくつかむことがポイントです。
明るい気持ちから暗い気持ちになったり、おだやかな気持ちから怒りの気持ちになったり、中立の気持ちから悲しい気持ちになったりと、です。
(二つの気持ちが同時に起こっていることもあります)
それらの『感情の変化』を直接的に書いていてくれれば楽なのですが、小説ではまわりくどい描写という形で感情の変化を表現しています。
ただ逆にいうと、そうした根拠がなく、問題が設定されることは絶対にありません。
必ず本文中に根拠はあります。
この『感情の変化』を意識し、読解と解説の読み込みをしながら「この描写だったらこの感情と言えるな」という基準をつかんでいくと、点数が安定するようになります。
現代文にもう一つ重要なのは言葉の意味(語彙)です。
漢字よりも言葉の意味が大事です。
英単語と同じで、言葉の意味がないと文章の意味が読み取れません。
ポイントとなる『言い換え方』を学ぶにも言葉の意味が大事です。
例えば以下を自分の言葉で説明できますか?
・「蓋然性」
・「恣意的」
・「パラダイム」
・「アイデンティティ」
もし説明できないならこの言葉が出た瞬間に読解が困難になります。それは筆者が一番伝えたいキーワードを理解していないことになりますから。
なんとなく分かっているつもりでも、意味が説明できないことは意外とたくさんあります。
文章を読む中で分からない言葉があれば、辞書で調べて自分の言葉で説明できるようにします。
現代文の学習の進め方の前に、関関同立/上智MARCH/早慶/旧帝一工(除東大京大)/東大京大の合格者が使用した現代文問題集を紹介します。
この後に紹介する問題集の例は、こちらをもとにしています。
また主要な問題集について、関関同立/上智MARCH/早慶/旧帝一工(除東大京大)/東大京大ごとに合格者の使用率をまとめました。
今から初めて現代文の勉強をする人は、読解と語彙の問題集を一冊ずつ選んでやります。
以下は「安心してオススメできる一冊」ではありますが、レベルを間違えなければ、以下に限らず好きなもので構いません。
合否は「どの問題集を選んだか」ではなく「その問題集をどうこなしたか」で決まります。
<現代文 読解 標準レベル 問題集例>
- 入試現代文へのアクセス 基本編(河合)
- マーク式基礎問題集現代文(河合)
- 船口のゼロから読み解く最強の現代文(学研)
- 入門編 現代文のトレーニング(Z会)
- 出口のシステム現代文 ベーシック編(水王舎)
<現代文 語彙・漢字 問題集例>
- 現代文キーワード読解(Z会)
- 入試 漢字マスター1800+(河合)
- 読解を深める現代文単語(桐原)
読解問題集は、まずはテストだと思って解きますが、ただ正解だった/不正解だったで終わらせないようにしてください。
ここでの正解/不正解はあまり重要ではなくて、解説を徹底的に読み込んで「現代文はどう読んでいけばいいか」「どう読んでいけば正解にたどりつけるか」を、理解することが大事です。
できれば2巡は繰り返して、2巡目に解くときは、ただ解くのではなく「なぜそれが正解であるかを説明できる」ように意識すると、大きく力がつきます。
語彙・漢字の問題集は、一気にやろうと思わずに、1日1,2ページずつで構いませんので、少しずつ進めていくといいと思います。
もし漢字の問題集を解くときでも『言葉の意味』を意識しながら、解くようにしてください。
2,3巡繰り返すことを強くオススメします。
次に共通テストの演習をやります。
共通テストの予想問題集とか対策問題集ならなんでも構いません。
<共通テスト>
- ハイスコア! 共通テスト攻略 国語 現代文(Z会)
- はじめての共通テスト対策 国語(Z会)
- 共通テスト問題研究 国語(教学社)
- 大学入学共通テスト 現代文 実戦対策問題集(旺文社)
いきなり共通テストだとビックリするかもしれません。
ですが最低限の暗記が前提となる数学/英語/社会/理科と異なり、 現代文は『読み方』と『語彙』だけをかじれば、高1、2でも共通テストの問題にチャレンジ可能です。
実際、難関大に合格した人は、現代文の問題集をほとんどこなさずに、センター試験や二次試験の過去問演習に取り組んでいます。
最初は全くできなくても構わないので、本番レベルの問題を解きながら学んだ方が早く成長できます。
慣れてきたら選択肢を読む前に、答えを自分で0から作ります。
選択肢を見ると、どうしても消去法になってしまい、自分の頭で考えるクセがなくなるからです。
答えを作ったら、選択肢の中から自分の答えに近いものを選びます。
次に解答を見て、間違っていたら、「なぜ自分が選択した解答が違っていたか」を言語化します。
ほとんどの場合は、文中にある言葉を読み違えたか、文中にはないことを勝手にあると思ってしまったか、のどちらかです。
この間違えた理由の言語化をしつこくやることで精度が上がっていきます。
最初は時間がかかりますが、共通テストの現代文を10年分ほどをやると段々コツがつかめてきます。
10年分といっても現代文だけなら400分なので、答え合わせの時間を除けば、約7時間で終わります。
共通テストの現代文に慣れてきたら、二次試験過去問を問題集だと思ってこなしてみます。
二次試験の現代文の問題が難しい人、または現代文で高得点を取りたい人は、以下の問題集などで補強します。
<現代文 読解 応用 問題集例>
- 入試現代文へのアクセス 発展編(河合)
- 入試現代文へのアクセス 完成編(河合)
- 現代文と格闘する(河合)
- 上級現代文I(桐原)
これらの問題集を解き、徹底的に解説を読み込むと、『虫の目』と『鳥の目』を強く意識するようになると思います。
ただ正解を書けるようになるだけでなく、「なぜそれが正解であるか」と理由が説明できるようになったり、記述式の問題であれば「どんなポイントを解答に含めると正解になるか」までを意識できるようになったら、現代文の得点が安定するようになるはずです。
本コラムのまとめ
- 現代文はちゃんとやればちゃんと伸びる
- 現代文は感覚でなく論理で解く
- 現代文のために言葉の意味を正解に覚える
- 現代文の問題を解くことは読書を兼ねる
- 現代文は語彙/読解を一冊ずつ ⇒ 共通テスト